BCP(事業継続計画)とは?BCMとの違いなどを簡単に解説

BCP(事業継続計画)とは、企業が緊急事態の際、どのように対応して事業を継続させれば良いかを計画したものです。

近年、地震や水害に加え、新型ウイルスの流行など、備えるべきリスクが多くなっています。この記事では、BCP策定を検討している担当者様に向けて、BCPの策定手順やポイントを分かりやすく解説していきます。ぜひお役立てください。

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BCP(事業継続計画)とは?

BCPとは企業のリスク管理のひとつで、自然災害や事件といった緊急事態が発生した際に、被害を最小限に抑え、一早く事業が再開できるように対策や方法をまとめた計画のことです。「Business Continuity Plan」の頭文字をそれぞれとって、BCPとなっています。緊急事態には、地震や台風といった自然災害のほか、新型インフルエンザや新型コロナなどの蔓延、原子力事故や火災、停電など、様々なものが対象範囲に含まれます。

BCPとBCMの違い

BCM(事業継続マネジメント)は、BCP(事業継続計画)の策定を含む、策定前の分析・検討や、策定後の見直し・改善など、BPCを運用するための総合的なマネジメントです。内閣府が公表している事業継続ガイドラインには、次の要件が含まれています。

  • BCP(事業継続計画)の策定
  • BCP(事業継続計画)を実現するための予算・資源の確保
  • BCP(事業継続計画)を浸透させるための教育・訓練の実施
  • 前述した諸制度の点検・継続的な改善

BCPとBCMの関係を説明しているイラスト

(出典)内閣府「事業継続ガイドライン第三版

BCPと防災計画の違い

BCPは、緊急事態発生後どのように事業継続、あるいは早期復旧させるのかといった点を重視しています。それに対して防災計画は、緊急事態による被害を回避・軽減し、人命や自社の財産を守る事を目的とします。また、BCPは緊急時に経営資産が失われた際の事後対策であるのに対して、防災計画は経営資産が失われないようにするための事前対策であるともいえます。

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BCP対策を表しているイラスト

国内のBCP策定状況

株式会社帝国データバンクによると、BCPを策定していると答えた国内企業は17.6%です。
前年の16.6%から増加しているものの低水準に留まっており、大企業が32.0%に対して中小企業が14.7%と二極化の傾向があります。中小企業からは、人材不足や情報不足などの声が低調の原因として上がっており、これらの課題に対する取り組みが重要となっています。

参照:株式会社帝国データバンク 2021年6月

事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2021年) (tdb.co.jp)

BCP(事業継続計画)が必要になっている背景

BCPが必要な理由は、自然災害の増大や社会環境の変化など、いくつかの理由がありますので、具体的に解説していきます。

自然災害が多いため

日本は、地震や台風、豪雨などの自然災害が多い国です。
これらの自然災害が起こった場合、インフラの停止などによって、企業活動が一時的に行えなくなる可能性があります。また、直接的な被害に遭っていなくても、取引先が被災していたり、世間の自粛ムードを受けたりする事で、事業の継続が困難になる事もあります。特に近年は自然災害の発生が増えているため、有事の際でも事業を継続できる体制をあらかじめ築いておく事が求められています。いつ何が起きるか分からない状況の中、非常時はどのように動けば良いのか分からず社内が混乱してしまう可能性があります。BCPの策定によって全てをカバーできるとは限りませんが、何を優先させるかなど、緊急時の重要な指針になります。

ウィズコロナに対応するため

新型コロナウイルスなどの感染対策も必要です。
もし社内で集団感染が出てしまった場合、経営への負担はとても大きく、事業を縮小するような状況へ追い込まれてしまうケースも考えられます。自然災害の場合は、出来るだけ早く災害から復旧させる事が求められます。しかし、新型ウイルスなどの場合は被害の期間が把握できないため、復旧よりも、社員の健康を守りながら、どのようなレベルで事業を継続させるかがポイントとなります。

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BCP(事業継続計画)を策定するメリット

BCPを策定する事で、多くのメリットが得る事ができます。ここでは、どのようなものがあるか解説いたします。

緊急時に迅速な対応ができる

緊急事態によって事業に大きく損害が出ると、最悪の場合、倒産に追い込まれるリスクもあります。あらかじめ緊急時の対応を把握しておけば、迷ったり、間違った行動を取ったりする事が防げます。計画が曖昧な場合、復旧への時間がかかり、更に損害が広がるパターンも考えられます。そのため、策定後は社内でよく周知しておくことが重要です。

緊急時にも顧客を逃がさない

復旧が遅くなってしまうと、顧客が離れてしまうケースが出てきます。前もってBCP計画を立てておけば、緊急時でも一早く事業を立てなおす事が可能です。顧客離れのリスクを減らして市場シェアを維持するために、BCPの策定は欠かせないといえます。

企業評価につながる

緊急事態が発生すると、業務に損害が出たり、活動が一時中断になったりと良くないイメージを残してしまう企業が出てきます。その中、復旧スピードが早く、事業継続できている企業は、取引先や株主を含め、社会的な信用度を高められるでしょう。社会的責任(CSR)を果たせているとも評価され、経営のプラスになります。

業務の棚卸しができる

BCPを策定する過程で、自分達の企業には、どのような業務があるのか、優先順位はどのようにすべきかなど、改めて可視化する事ができます。今まで気が付かなかった業務のメリット・デメリットを再確認などができ、経営戦略の進展にも繋がります。

BCP(事業継続計画)策定のポイント

BCPを策定する際のポイントを説明いたします。

政府の資料を参考にする

BCPを策定する際、何もない状態で一から考えるのは難しいため、参考資料を用意しておくと便利です。例えば、中小企業庁のBCP策定運用指針や内閣府の事業継続ガイドラインなどがあります。中小企業の特性や実状に基づいたBCPの策定・運用方法やBCM(事業継続マネジメント)のプロセス・リスク分析の方法・BCP策定の手順詳細などが記載されているため、参考にしてみると良いでしょう。

中小企業庁BCP策定運用指針

内閣府 事業継続ガイドライン

自社に合ったものを策定する

自社に合わない計画を策定するのは危険です。現実的ではない方法だと、緊急時に運用できない可能性が出てきます。また、無理な計画は社員のモチベーションを下げ、トラブルに繋がりかねません。確実に行える範囲を把握し、計画を立てることが重要です。

できるところから始める

緊急事態には様々なケースがあるため、最初から全てを網羅するのは難しいです。できるところから始め、重要事項を整理しながら策定しましょう。また、社会状況や自然環境は常に変動しているため、情報は新しいものへと随時更新を前提とする必要があります。定期的にBCPに関するミーティングや社内教育を行い、ブラッシュアップすると良いでしょう。

BCP(事業継続計画)策定の手順

BCP策定をスムーズに行うためには、段階ごとの手順がありますので、それぞれ解説していきます。

1.方針をたてる

BCPを策定する事で何を目指すのか、しっかりと方針をたて、共有する事で、緊急時に社員一人ひとりが適切に動く事ができます。想定される自然災害やリスクをリストアップした上で、発生時の自社への影響度などを考え、自社のBCPが対象とする災害・リスクを絞り込みましょう。社員や顧客を守るため、取引先からの信用を守るためなど、自社の経営理念や基本方針とすり合わせる事によって、自社に適した方針を考える事も大きなポイントとなります。

2.社内体制を整える

BCPの内容は企業の複数の部門に関係するため、策定にはプロジェクトチームを編成して進める場合が多いです。また、プロジェクトチームの各作業を調整するために事務局を設置する場合があり、多くの企業では総務部が担当しています。また、BCP策定の取り組みは、チーム内だけでなく、全社員が情報を共有するべき事柄です。全社員に対しても、BCPの周知徹底が図れるような社内体制の整備を行いましょう。

3.事業の優先順位をつける

緊急事態中に、全ての事業を完全に復旧させる事は厳しいと考えられるため、あらかじめ優先順位をつける必要があります。優先度の判断基準としては、「会社の売上に最も寄与している事業」「作業遅延により、損害が大きくなる事業」「市場シェアや会社の評判を維持するために重要な事業」などが挙げられます。

4.事前案を策定する

事業の優先順位が決まったら、さらに事業ごとの業務を洗い出し、復旧させる業務の優先順位をつけて事前案を策定します。中核事業が停止した場合、どのくらいの期間までなら会社の体力が持つのかを考慮する事が重要です。あらかじめ事業を継続させるための業務・リソースを把握し、復旧時間にどれ位かかるのか、あらゆる場合のシミュレーションを行う事で、より具体的な事前案を策定できます。事業に必要な資源が被災して利用できなくなった場合、臨時従業員、資金、情報のバックアップなど資源の代替を確保する手段の検討が必要です。また、社員の連絡手段や指示系統の確立なども、事前対策として必要となります。

5.BCP発動基準や体制を整備する

BCPを策定するためには必ず「BCPの発動基準」と「BCP発動時の体制・要員」を明確にする必要があります。発動基準が曖昧だと、発動に時間がかかる事で損害が大きくなる可能性があります。また、緊急時は冷静な判断が困難であるため、事前にチームを形成し、トップダウンで素早く動く事のできるようにしましょう。誰が指示を受けて実際にどのような行動するのか、細かい部分まで具体的に決めると混乱が防げます。

6.社内で共有する

BCPの内容がまとまったら、文書化を実施して、誰が読んでも分かる状態にしましょう。中小企業庁が用意しているフォーマット(BCP様式類)を使用する事で効率的に作成できるので、そちらも参考にしてみてください。

中小企業庁BCP策定運用指針

また、緊急事態発生時に社員がBCPをすぐに活用するために、あらかじめ社員向けのBCP教育や訓練を実施すると良いでしょう。例えば定期的にBCPに関するディスカッションや勉強会を行ったり、応急救護法や防災関連のセミナーを行う事で、BCPの知識を定着させたり、有事への心構えを行う事ができます。

7.随時更新する

BCPは必要に応じて見直しが必要となります。改定のタイミングとしては「社内の組織に大きな変革があった場合」や「国や業界のガイドラインが改定された場合」などが挙げられます。また、新型コロナウイルスなど、これまでになかったリスクの発生も、見直すタイミングの1つです。経営環境や社会の変化よって随時更新する事で、実効性の高いBCPを維持しましょう。

まとめ

BCPは、緊急事態が発生した際に、被害を最小限に抑え、復旧時間を減らす重要な計画です。

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