株式会社コクヨMVPは、1962年の創業以来、コクヨグループの国内主要生産拠点として、鳥取の地で半世紀以上にわたりモノづくりを支えています。国内トップシェアを誇るファイル製造を軸に、透明クレヨンの開発など、既存の枠にとらわれない製品開発を展開。近年はR&D(研究開発)にも注力しており、確かな品質の維持と地域に根ざした事業活動を通じて、グループ全体の価値向上と地場産業の発展に寄与しています。今回は、2021年に竣工した新事務所について代表取締役社長の丸山様をはじめ、プロジェクトメンバーの小島様、白井様、そして従業員の皆様にお話を伺いました。
株式会社コクヨMVP
代表取締役社長 丸山 博之 様 プロセスイノベーション企画部 部長 小島 堅二郎 様 プロセスイノベーション企画部 白井 淳 様
| 所在地 | 〒680-0945 鳥取市湖山町南2丁目201 |
|---|---|
| URL | https://www.kokuyo-mvp.co.jp/ |
| 業種 | 製造業 |
| 人数 | 約202名 |
| 面積 | 約314.3坪(新社屋の面積) |
お客様の課題
- 相談したい時に、即座に打ち合わせができる場所がない
- 社員食堂が「単なる食事の場」になっており、交流が生まれにくい
コクヨのご提案
- ガラス張りの会議室や予約不要のスペースを配置し、即相談できる環境を構築
- 社員食堂をソロワークや会議にも使える多目的スペースへ
まず、今回の新事務所竣工プロジェクトが開始された背景について教えていただけますでしょうか。
(小島様)
この新事務所竣工プロジェクトは、前社長の原田の代に、将来の事業構造を見据えて着手したものです。建物の老朽化という切実な課題もありましたが、一番の目的は、これまでのファイル事業に続く「新しい事業の柱」を創出するための拠点をつくることにありました。

新事務所:1階に社員食堂と会議室、2階に事務所や会議室、打ち合わせスペースを配置。それぞれのフロアが通路で工場と直結しているので、現場との行き来もスムーズに。
将来の増築も視野に建設場所を検討
(小島様)
当初は既存の工場棟の上に新たな事務所を構える案もありましたが、コスト面や、まだ用途が固まりきっていない段階での決断は難しく、見送ることにしました。また、既存棟を解体して建て直す案も、将来的な工場の増築スペースを奪ってしまう懸念がありました。
そのため、将来的なC棟・D棟などの工場増設に備え、あえて旧事務所や食堂があったスペースはそのまま残し、かつて駐車場だった現在の場所に新たな事務所を建設することに決めました。
単に機能を集めるだけでなく、事務所と工場を内廊下でつなぎ、部門間の連携を促す。「未来への投資」としての拠点づくりが、ここから始まりました。

プロセスイノベーション企画部 部長 小島 堅二郎 様
新事務所竣工前の働く環境における課題について教えていただけますでしょうか。
施設の老朽化と部門の分散が相互理解の障壁に
(白井様)
施設の老朽化もさることながら、何より「物理的な分断」が大きな壁となっていました。以前は、総務、配送、製造、開発の各部門が敷地内の2つの建物に分かれていて、社員食堂も別棟にあるような状態でしたので……。
同じ敷地にいながら、他部署が今何をしているのかが見えにくい。打ち合わせも部署内だけで完結することが多く、部門を越えた相互理解がなかなか進まない状況でした。

プロセスイノベーション企画部 白井 淳 様

改装前の事務所の様子
新事務所竣工後に目指した働き方について教えていただけますでしょうか。
「リレー方式」から「フェーズ方式」へ
(小島様)
特に変えたかったのは、仕事の進め方そのものです。これまでは、営業が案件を取り、開発が設計し、最後に現場へ渡すという「リレー方式」が主流でした。しかしこれでは、自分の担当が終われば次へ投げるだけになり、プロジェクト全体を「自分事」として捉えにくいという弱点がありました。
そこで導入したのが「フェーズ」という仕組みです。
製品企画の早い段階から生産技術や生産現場のメンバーも加わり、企画~初回生産~継続量産の各フェーズでテーマや価値を定義しながら進める手法です。現場が初期から関わることで、「自分たちの製品が誰にどんな価値を届けるのか」という本質が薄れることなく、品質や製造効率を考慮したものづくりが可能になりますし、「自分たちの製品がどんな価値を届けるのか」という目的を共有できるようになりました。これは、社員が仕事にやりがいを感じる上でも、非常に大きな変化だと考えています。
議論を円滑に行うためのスペースと仕組みの定着
(白井様)
製品の企画段階でコンセプトを固め、それが全フェーズで一貫して守られる仕組みを整えました。途中で担当が変わっても、常に「そもそも何のためか」という原点に立ち返って議論するスタイルが定着しています。新事務所には、こうした議論をスムーズに行えるスペースをあちこちに配置しました。
新事務所構築時にこだわったポイントや実現した手段について教えてください。
事務所と生産現場、2軸で進めた組織再編
(小島様)
プロジェクトは、事務所側の働き方を考えるチームと、生産現場の再編を行うチームの2軸で動かしました。ファイル製造から新規事業へとシフトするため、成型工程の内製化を含めた生産ラインの再編も同時並行で進めていきました。
「必要な時にすぐ集まれる」空間設計
(白井様)
事務所側の設計は、コクヨの皆さんと定期的に議論を重ねて形にしました。こだわったのは「思い立った時にすぐ集まれる仕掛け」です。部門の壁を越えてアイデアをぶつけ合えるよう、コミュニケーションスペースには多様性を持たせました。
例えば、ガラス張りのミーティングスペースを作って会議の様子を可視化したり、部屋ごとに内装を変えてオープン・クローズを使い分けられるようにしたりと、用途に合わせた工夫をしています。

執務スペースの脇にガラス張りのミーティングスペースを設置

製品サンプルを広げながらコミュニケーションが取れるハイカウンタータイプのミーティングスペース

リラックスして会話ができるコミュニケーションスペース(お昼休憩の憩いの場としても人気!)
スピード感を優先した運用ルール
(白井様)
ミーティングスペースは、あえて「予約なし」で使えることを基本にしています。相談したい瞬間にすぐ話ができるスピード感を大切にしたかったからです。
執務スペースは、月1回の席替えで交流を促進
交流を促進するため、月に一度、部署をシャッフルした席替えを行っています。固定エリアを決めないことで、思わぬ部署間でのコミュニケーションが生まれています。

スケルトン天井の開放感と緑を感じる心地よいオフィス
社員食堂リニューアルによる「ABW」の浸透と連携強化
(小島様)
以前の食堂は、別棟に独立していたため、非常にアクセスが悪く、ただ「食事を済ませるだけの場所」という位置づけでした。今回のリニューアルでは食堂を事務所棟の1階に置き、工場とも直結させました。それにより、移動の負担が減り、誰もがふらっと立ち寄れるようになりました。

リニューアルした社員食堂
(白井様)
食堂内には、一人で集中できる窓際の「ソロワークスペース」や、リフレッシュ機能も盛り込みました。実際に利用が始まってみると、食堂で打ち合わせをしたり、気分転換に席を移動して作業したりする光景が日常になりました。仕事をする場が事務所だけでなく、食堂という選択肢も使い分ける「ABW(Activity Based Working/時間や場所を自由に選ぶ働き方)」の考え方が自然と根付いています。工場のスタッフも集まりやすくなったため、現場との連携も目に見えて強まりました。

左:工場棟と社員食堂を繋ぐ廊下/右:社員食堂でのミーティングも日常の光景に
オフィス構築時に苦労した点や、それをどのように乗り越えられたかについて教えてください。
(白井様)
一番の課題は、環境の変化に対する社員の不安をどう取り除くかでした。長年、固定席で働いてきたメンバーにとって、月1回の席替えや社員食堂などでも働ける新しいワークスタイルには戸惑いもあったようです。
そこで、丁寧な全体説明会を行いました。単に「建物が新しくなります」という話ではなく、「なぜこれが必要なのか」「何を目指しているのか」という背景と目的をしっかり共有しました。納得感を持って進めるプロセスを大切にしたことが、スムーズな移行の鍵になったと感じています。
新事務所竣工後の採用活動での効果はいかがでしょうか。
(白井様)
求人サイトへの反応も増え、確かな手応えを感じています。意外だったのは、保護者の方々からの評価です。高卒で入社を決めてくれた方の約半数が「親の勧め」を理由に挙げています。
事業内容だけでなく、建物の外見や清潔感、企業の信頼性を総合的に見ておられるようです。製造業において、ご家族からも「ここなら安心だ」と思ってもらえる環境を整えることは、人材を確保する上で非常に重要だと再認識しました。
ここからは、従業員の方々にもお話を伺いました。

左から
古澤 孝弘 様:生産部門ケミカル製品管理者(ケミカル製品、進捗・品質管理)
前田 健太郎 様:生産技術(設備立ち上げ、新規事業の製造ライン設計)
白井 淳 様:プロセスイノベーション企画部(人事労務・広報)
溝口 和 様:生産現場実務(消しゴム等の製造)
趙 解明 様:生産部門・生産管理部門 部門長(生産計画の全体管理)
三原 琴美 様:プロセスイノベーション企画部(人事労務・広報)
新事務所になってから働き方はどう変わりましたか。
(古澤様)
私は、以前、別の工場で働いていました。当時(新事務所竣工前)は、用事があってこちらの工場に立ち寄っても食堂で会議をしてすぐ帰るだけという状況でした。そのため、事務所で皆が何をしているのか分からず、どこか「アウェイ感」があったのを覚えています。
今は、全てが一つに繋がり、移動する時に他部署の様子が自然と目に入ります。会議の後に「現場も見ていこうか」と、別の工場で働くメンバーが立ち寄ってくれる機会も増え、お互いの仕事が見えるようになりました。これは大きな変化だと感じています。

古澤様:ご担当/生産部門ケミカル製品管理者(ケミカル製品、進捗・品質管理)
物理的な距離が近づいたことで、相談がしやすく業務もスムーズに
(趙様)
執務スペースの座席運用については、当初は部門が混在する席替えに不安もありましたが、チャットツールの活用や食堂での1on1など、コミュニケーションの取り方を工夫することで徐々に慣れていきました。

趙様:ご担当/生産部門・生産計画の全体管理
(白井様)
個人的には、趙さんと三原さんのエピソードが印象に残っています。趙さんが「初めて三原さんと隣の席になったけど、喋ってみたらとても話しやすい人だった!」とうれしそうに報告してくれたことがあったのです。お二人の距離がぐっと縮まった瞬間でしたね。
(趙様)
それまでは、用事がある時だけ席へ行って用件を伝えるだけの「事務的な関係」でした。でも隣になってみたら、三原さんは仕事以外のことでもすぐに答えてくれる、本当に素敵な人だと分かって。物理的な距離が縮まったことで他部署への相談も驚くほどスムーズになり、仕事が格段にやりやすくなりました。
片付けの習慣化
(前田様)
月次の席替えを実施するようになり、机に私物を置かなくなったのも良い変化です。次に使う人のために片付ける習慣が、一日の仕事に区切りをつけ、効率アップにもつながっています。

写真中央:前田様 ご担当/生産技術(設備立ち上げ、新規事業の製造ライン設計)
リフレッシュの質を向上させた食堂のリニューアル
(溝口様:生産現場)
正直、昔の食堂は入るのが少し怖かったんですよ(笑)。ドアを開けた瞬間、ベテランの方々に一斉に見られている気がして……椅子も冷たかったですし。今は照明も落ち着いていて、一人でもリラックスして過ごせます。休憩の質がぐっと上がりました。

左 溝口様:ご担当/生産現場実務(消しゴム等の製造)/右 以前の食堂の様子
事務所内にお気に入りの場所はありますか?
(趙様)
私は「A校正(エーこうせい)」のスペースが一番好きですね。ここは、製品が指示通りにできているか最終的な品質チェックをしたり、特に仕様変更があった際にその内容が正しく製品に反映されているかを厳密に確認したりする、品質管理の要となる場所です。
以前は収納庫の上に書類やサンプルを積んでいましたが、今は専用のスペースでじっくり見られる。現場のリーダーたちが「どこに気をつけて作ったか」「何が変わったか」を細かく指示書に書いてくれているのを見ると、現場でみんなが頑張っているのが伝わってきて、自分の勉強にもなります。

執務スペースに隣接したA校正スペース(品質の確認を行う場)
新事務所竣工後の周囲の反応などを教えていただけますでしょうか。
(趙様)
職場見学に来た近所の子が「あんな綺麗なところで働きたい」と言ってくれたり、私の息子も「コクヨMVPに入りたい」と言って大学で頑張っていたり。自分の職場を家族に自慢できるようになったのは、本当にうれしいことですね。
(溝口様)
地元の友人から「あの建物、何?」と聞かれることが増えました。夜のロゴのライトアップも目立ちますからね。「あそこは私が働いている会社だよ」と胸を張って答えられるのが誇らしいです。

新事務所は、地域の注目スポットに
(三原様)
採用でも、自信を持ってオフィスを案内できるのは大きな強みです。今の求職者は職場環境も重視されているので、このオフィスそのものが当社の魅力を語る重要な武器になっています。

三原様(右側):ご担当/人事・広報
最後に、新事務所稼働後の現状評価について教えていただけますでしょうか。
(丸山社長)
新事務所竣工は、私が就任する前のプロジェクトですが、当初の狙い通り、コミュニケーションはかなり活性化している印象です。特に食堂での部門を越えたやり取りは頻繁に見かけますし、情報の風通しが良くなった手応えがあります。一方で、自由な働き方が進んだからこその課題も見えてきました。少し「自律性」の面でもどかしく感じる場面も散見されます。
自由な環境だからこそ求められる「メリハリ」ある行動を
(丸山社長)
食堂などを利用し、集中して作業するのは良いことですが、特に役職者が席を外したまま居場所が分からなくなると、周囲の相談が停滞してしまいます。
今の時代、ガチガチに管理するつもりはありません。ですが、自由な環境だからこそ「メリハリ」が重要です。目的を持って動き、集中する時は集中する。そして、周囲が困らないよう所在を明確にする。自由な働き方とセットで、自律した行動をさらに浸透させていきたいですね。

代表取締役社長 丸山 博之 様