1.フリーアドレスとは
フリーアドレスとはオフィスで決まった座席に座って仕事をするのではなく、空いている好きな座席を選んで仕事をするワークスタイルです。
もともと、比較的自由度の高い働き方が浸透しているIT企業やベンチャー企業を中心に導入が進んでいましたが、最近ではテレワークが普及してきた影響でオフィスや働き方を見直す企業が増え、その一環でフリーアドレスの導入を検討する企業が増えてきています。
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フリーアドレスの導入を検討中の方へ
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2.フリーアドレスはおもに2パターン
フリーアドレスの運用には、主に「完全フリーアドレス」と「グループアドレス」の2パターンがあります。それぞれ解説します。 ●完全フリーアドレス ●グループアドレス
完全フリーアドレスとは、オフィス内の座席が完全にフリーな状態のことです。毎日違う席を選んで仕事をするため、部署・部門を超えた様々な方とコミュニケーションを取ることができます。また、その日の気分や業務で好きな座席を選ぶことにより、座る席次第で毎日目に入るものが違ってくるため、より新鮮な気持ちで仕事をすることができますが、一方でメンバーの居場所が分かりづらいといった特徴もあります。
グループアドレスとは、職種や部門など、グループごとに指定された机のレイアウトの範囲内で自由に座ることができる運用のことです。完全フリーアドレスほどではないものの、マンネリ化を防ぎ、気分転換しながら仕事に取り組むことができます。また、完全フリーアドレスに比べ、同じグループのメンバーは近くに座っているため日々のコミュニケーションを担保することができます。一方で、座席の共有効果が下がるためスペース効率は若干劣ります。
3.フリーアドレスの代表的な導入目的
フリーアドレスの代表的な導入目的はおもに4つあります。ここでは、それぞれ詳しく解説します。 ●オフィスコストの削減 ●コミュニケーションの活性化 ●社員の意識改革 ●生産性の向上
フリーアドレスは社員全員分の座席を準備しないため、固定席に比べオフィス内に必要な座席数を削減することができ、結果的にオフィス面積の省スペース化につながります。また、テレワークと組み合わせて出社率をコントロールすることで、必要なオフィス面積がさらに削減できる可能性があるなど、オフィス面積や賃料の削減に有効です。
フリーアドレスでは部門を超えた社員同士の交流がしやすくなります。固定席運用で決まったレイアウトでは、どうしても部門のメンバーなど同じ人同士でしか話す機会がありません。フリーアドレスを導入することで、毎日隣に座る人が変わり、社員同士のコミュニケーションを促進します。
基本的に、フリーアドレスは業務内容に合わせて自分で席を選びます。そのため、自発的な行動や風土醸成が期待できます。たとえば、午前中は打ち合わせに参加しやすいように何人かで座れるミーティング席、午後は資料作成に集中したいので1人席にする、といったことも可能です。また、一日の中でも、業務に合わせて席を移動することでタイムマネジメントがしやすくなり、効率良く仕事ができることも魅力のひとつです。
フリーアドレスにより、コミュニケーションが盛んに行われるようになったり、社員一人ひとりが効率的に働くことができるようになったりすることで、生産性の向上へつながることが期待できます。業務に合わせたレイアウトにすることで、働く環境に対する社員満足度の向上に繋がり、社員のモチベーション向上にもつながるでしょう。
4.フリーアドレスはどれくらい浸透している?
フリーアドレスは、2021年5月時点で23%の企業が導入しており、「【都市圏】100名未満」を除くと20%以上の導入率となっています。特に「【都市圏】300-999名」では28.2%の企業が導入しており、導入予定の企業も含めると47.6%と半数近い企業に浸透していることが分かります(コクヨマーケティング調べ)。 *2021.5「オフィスや働き方に関する調査」コクヨマーケティングにて実施
回答者属性:社員数999名以下、企業の総務部門従事者(n=618)、【都市圏】東京都、神奈川県、愛知県、大阪府、福岡県
5.フリーアドレスが向いている企業
フリーアドレスを導入するには、おもに4つの条件が挙げられます。ここでは、フリーアドレスに向いている企業について解説します。
●情報の一元管理ができる企業
フリーアドレスの場合、場所を問わず情報を閲覧したり更新したりできるようにする必要があります。そのため、ICT(情報通信技術)による情報の一元管理が求められます。例えば、スケジュールなどはホワイトボードに予定表を記載するスタイルでは、その場に行かなければ予定を記載したり確認したりすることができないため、グループウェアなどでスケジュールを共有し、PC上でアクセスできるようにしておくなどがあげられます。
●ペーパーレスを実践している企業
フリーアドレスは紙の資料を頻繁に閲覧する職種や、書類による手続きを必要としている企業には不向きといえます。フリーアドレスは毎日座る座席が変わるため、紙の書類が必要となる業種や職種では、書類を座席まで持ち歩かなければならず、管理や情報漏洩などの観点から、席を頻繁に変えることはおすすめできません。そのため、書類の電子化によりペーパーレスをできる企業は、フリーアドレスを導入しやすいと言えるでしょう。
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●在席率や在席時間にバラつきがある社員が多い企業
就業時間中、ほとんどの社員がオフィスに在席する企業では、人数分のデスクやイスが必要となるため、フリーアドレスによってスペース効率を上げられるなどのメリットは享受できないかもしれません。外出の多い営業職であれば、日中使われていない席を有効活用できるためフリーアドレスの効果が期待できます。さらに、テレワークやフレックス制を導入するなど、柔軟に働ける制度やルールが整っていると、オフィスの在席率や在席時間にバラつきが出てくるため、フリーアドレスのメリットが生かされるでしょう。
●フリーアドレスをコンセプトとして推しだせる企業
フリーアドレスが形式的にならないようにするためには、新しい働き方に対する社員の理解が必要となります。そのため、自律的に働くことで個人の成長を促す、コミュニケーションを活性化し組織の横連携を強化することでチーム力を向上させるなど、コンセプトを推しだすことが企業には求められます。フリーアドレス導入の意図や後述するメリットを社員に共有していきましょう。
6.フリーアドレスの導入メリット
フリーアドレスの導入によって得られるメリットをそれぞれ解説します。
●オフィス面積や賃料などコスト削減できる
フリーアドレスにすると、人数分の座席が必要なくなりオフィスのスペース効率が上がるため、オフィス面積や賃料の削減が期待できます。最近では、感染症対策のためにテレワーク実施により出社率を制限したり、フリーアドレスを導入したりすることで、オフィス面積の縮小を検討している企業も増えてきています。
●社内のコミュニケーションが促進される
フリーアドレスを導入することで、部署や部門、さらには上司・部下など役職を超えたタテ・ヨコ・ナナメのコミュニケーションが生まれやすくなります。毎日隣の席や前の席に座る人が違うので、お互いの仕事の近況を報告し合うことで刺激も受けやすく、ちょっとした会話や雑談から新たな気づきが得られ、アイデア創出にもつながるでしょう。
●レイアウト変更がしやすい
フリーアドレスは部門ごとにエリアが決められておらず、座席と人が紐づいていないため、レイアウト変更も柔軟に対応しやすいことが特徴です。固定席の場合は、席を変えるときに荷物や資料を移動させるのにひと苦労です。フリーアドレスは毎日席が変更になるので、組織変更や急な人数増減、短期間のプロジェクト対応など、レイアウト変更もスムーズに進められます。
●オフィススペースを有効かつ綺麗に使える
フリーアドレスでは、全社員の座席が必要なくなるため、座席を減らした分、空いたスペースにデスクとイスを置いて簡易な打ち合わせゾーンを作ったり、リフレッシュスペースを新設したり、別用途のスペースとして活用することが可能です。また、毎日違う座席に座るということは、私物はデスク周りに置いておけないため、オフィスの整理整頓につながりやすく、快適な環境で業務を行うことができます。
7.フリーアドレスの導入デメリット
ここからはフリーアドレスの導入におけるデメリットを解説します。
●業務や社員の管理がしにくい
管理職からすると、社員の業務進捗や社員の状況、居場所を把握しにくいというデメリットがあり、日々の報連相やコミュニケーションに不安を感じるケースもあるようです。そのため、外出やオフィスに在席している時間などスケジュールに入力し関係者が見られる状態にしておく、チャットを活用してちょっとした連絡を取り合うなどの工夫が必要です。
●社員が既得権をはく奪されたと感じるケースがある
固定席を好む社員も一定数いるため、フリーアドレスを導入すると、自分の座席がなくなった=既得権を奪われたと感じる方が出る可能性もあります。今の固定席に満足して、動きたくないと思っている方にとっては固定席が無くなることは業務の弊害に感じるでしょう。この場合は、フリーアドレス導入の意図やメリットを社員に共有し、根気強く理解を求めることが必要です。
●ルール対応への個々の社員の負担がある
フリーアドレスの場合、座席を移動するたびにカバンや書類など荷物を移動させる必要があります。また、共有パソコンで運用している場合は、使用するパソコンも日によって変わるため、自分の設定を固定できません。その他、帰宅の際は座席を片付けて机の上に何もない状態で帰るようにするなどルールを設定することと、その対応についても、個々の負担や裁量が求められます。
8.フリーアドレス導入までのプロセス
導入目的の設定から社員への共有まで、フリーアドレス導入までのプロセスを解説します。 ●フリーアドレスの導入目的を定める ●フリーアドレスを採用する部署を決める ●必要なツールやレイアウトを検討する
まずはフリーアドレスの導入目的を定めます。導入目的に関しては、経営陣など上層部だけでなく、日々運用する社員含め、社内全体で共通の目的を共有することが大切です。
フリーアドレスは業務の特性によって向き不向きがあります。そのため、人事部門は機密書類や業務が多いため固定席だが、外出の多い営業部門や企画部門はフリーアドレスにしようなど、業務の特性を考慮した上で、フリーアドレスを採用する部署を決めていきましょう。●フリーアドレスの運用ルールを設定する
せっかくフリーアドレスを導入したにもかかわらず、結局毎日同じ席に座って固定化してしまったといったという失敗例をよく耳にします。座席運用は完全フリーアドレスするのか・グループアドレスにするのか、書類管理や整理整頓のルールはどうするのかなど、フリーアドレスには維持する仕組みが必要であり、そのためには運用ルールを設定し社員に浸透させる必要があります。
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フリーアドレス用のデスクには、人数の増減に柔軟に対応できる大型ロングデスクや、レイアウト変更が簡単にできるキャスター付きのデスクなど様々なタイプがあります。また、自席には基本的に荷物を置いておく場所がないため、荷物を一時的に置くためのワゴンや個人の荷物を収納するためのパーソナルロッカーがあれば、ノートPCもカギのかかる場保で保管ができるでしょう。オフィス内で移動する際にノートPCやその日使う書類を持ち運ぶにはモバイルバッグがあると便利です。
オフィスレイアウトやオフィス構築後の運用も見据えた上で選びましょう。
9.フリーアドレスのレイアウト設計を成功させる4つのポイント
ここでは、フリーアドレスのレイアウト設計を成功させる4つのポイントを紹介します。 ●レイアウトは綿密に計画する ●機能を重視したオフィス家具を選ぶ コクヨでは、社員一人ひとりに対し、今の働き方やオフィスにおける「満足度」や「重要度」を調査し、その結果から、課題の優先順位づけまでを無料で行う働く環境診断「はたナビPro」というサービスをご用意しています。
フリーアドレスを導入する目的、コスト削減、コミュニケーション活性化、社員の意識改革、生産性の向上など、何を重視するかでオフィスの設計・レイアウトやフリーアドレスの運用は変わってきますので、目的を明確化することからはじめましょう。特にレイアウトに関しては、フリーアドレスの導入目的を明確にしたうえで、オフィスの専門業者に相談するとスムーズです。また、座席数に不足が生じている、電源の数が足りないなど、オフィス環境は社員の不満に直接つながりやすいため、フリーアドレスを導入する部門や在席率などを勘案してレイアウトや座席数を検討することも重要です。このように、緻密にレイアウトを検討したうえで設計を進めましょう。
オフィス家具は目的に応じた機能を備えたものを選ぶとよいでしょう。たとえば、リラックスして業務が行えるようにカフェをイメージした家具を設置したり、外出の合間に立ち寄って少しの時間だけタッチダウンとして活用したい場合はハイカウンターを設置したり、集中して業務を行いたい・WEB会議も行いたい場合はソロワーク用の集中ブースを設置したりするなどがあげられます。
●ICT環境を整備する
フリーアドレスには、オフィスのどこでもストレスなく働ける環境にするために、ネットワーク環境やICT環境設備が欠かせません。持ち運びのしやすいノートPCやスマートフォン・タブレットなどのモバイルツールを配布する、書類の電子化やスケジュール共有など、ソフトウェアに関してもデジタル化を推し進めていくことが、フリーアドレス運用のポイントになります。
●導入後も継続的に検証を行う
フリーアドレス導入後も、社員の満足度に関する検証を継続的に行いましょう。導入すれば終わりではなく、フィードバックを通じて運用に不具合がないか、オフィス環境に不足はないか等々、改善・改良を繰り返すことが成功のポイントです。
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10.まとめ
働き方改革やテレワークの導入が進む中、フリーアドレスが注目されています。社員が日によって席を自由に移動できることで、部署間を超えたコミュニケーションが生まれ、自律的な働き方に繋がり、生産性向上も期待できます。固定席運用からフリーアドレスに転換すると、大きく働き方が変わるため慣れないうちは戸惑うこともあるかもしれませんがメリットも多いため、フリーアドレス導入をご検討されている方は、この機会に取り入れてみてはいかがでしょうか。
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