オフィス移転は、企業の一大プロジェクトです。企業の成長促進や環境改善を図る大きなチャンスである一方で、プロジェクトの中心を担う総務の担当者にとっては、多くのタスクを伴う業務となるでしょう。
この記事では、オフィス移転時に総務が行う、具体的なタスクを解説します。また、オフィス移転をスムーズに行うためのポイントについてもご紹介しますので、参考にしてください。
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オフィス移転における総務の役割
オフィス移転を円滑に進めるためには、総務が全体を統括しながら進めていくことが重要です。特に重要なのは、スケジュール管理と進捗確認です。オフィスを移転する際には多くの工程があり、1つの工程の遅れが全体のスケジュールに影響します。
また、複数の業者や社内部門との調整も総務の重要な役割です。こうしたプロジェクトマネジメントが、オフィス移転の成否を決定付けるでしょう。
最近では、ファシリティマネジメントの観点も重要視されています。ファシリティマネジメントとは、企業が所有する施設と利用環境を、経営戦略的視点から総合的に活用する経営活動のことです。
例えば、移転を機に企業ブランドを強化し、快適な職場環境を整えることは企業価値の向上にもつながります。総務は、このビジョンを実現するための中心的役割を担います。
オフィス移転時の現オフィスに関する総務タスク
オフィス移転が決定したら、着手しなければならない総務のタスクは多岐にわたります。ここでは、オフィス移転時の、現オフィスに関する具体的な総務タスクを解説します。
解約通知
新オフィスの場所が決まったら、早めに行うべきタスクが現オフィスへの解約通知です。
貸主と普通借家契約を結んでいる場合、借主は、貸主に対して解約通知を行わなければ、契約が自動更新される可能性があります。その場合、契約書に記載された期間内(多くの場合、新オフィスへの移転予定日の6ヵ月前まで)に、解約通知を行うことが重要です。期間を過ぎると、解約料が発生する可能性もあるため、現契約の条件を事前に確認しましょう。
貸主と定期借家契約を結んでいる場合は、契約期間の満了をもって契約が自動的に終了するケースが多いため、借主からの解約通知は通常不要とされています(ただし、貸主には、借主に対する「契約終了通知」の義務がある場合があります)。
なお、オフィス契約に関する手続きは、契約内容や個別の状況によって異なるので、具体的な対応については契約書を確認の上、必要に応じて専門家にご相談ください。
原状回復工事の確認
現オフィスを退去する際には、契約書に借主の原状回復義務が定められていることが一般的です。事業用物件であるオフィスの場合、居住用物件とは異なり、原状回復の範囲や条件は、主に賃貸借契約の内容にもとづいて判断されます。そのため、契約書の確認が特に重要となります。オフィス移転を計画する際には、原状回復工事について以下の項目を確認しましょう。
<原状回復についての確認項目>
- 工事の範囲(契約上、どこまでが借主負担の原状回復に該当するか)
- 指定業者の有無(自由に業者を選べるか、貸主指定の業者に依頼する必要があるか)
- 工事期限(いつまでに原状回復工事を完了させる必要があるか)
- 工事費用の見積もり(費用負担の範囲と支払方法の確認)
多くの事業用賃貸契約では、原状回復工事は、貸主指定の業者に依頼することが求められる場合があります。原状回復工事を行う業者に対して、見積もりや工事スケジュールの確認を早めに行うことをおすすめします。
また、原状回復工事の範囲によっては、想定以上の期間を要することもあるため、余裕を持ったスケジュール設定が重要です。もし、契約書の内容と実際の状況に不明点がある場合は、早めに貸主と協議することで、退去時のトラブルを防ぐことができます。
【免責事項】
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の事案については状況が異なる場合があります。具体的な原状回復の範囲や義務については、契約内容や個別の状況に応じて、弁護士や不動産の専門家にご相談されることをおすすめします。
オフィス移転時の新オフィスに関する総務タスク
現オフィスの解約や、原状回復工事の準備と並行して進める必要があるのが、新オフィスに関するタスクです。ここでは、新オフィスに関する具体的な総務のタスクを解説します。
ゾーニング・レイアウト
新オフィスで快適かつ効率的な環境を構築するために大切なタスクが、ゾーニングとレイアウトです。
オフィスにおけるゾーニングとは、執務スペース、会議室、休憩スペース、応接室など、オフィス空間を用途や機能に応じてエリア分けすることを指します。オフィス全体をどのようなエリアに分割するのか、そしてそれぞれのエリアにどのような役割を持たせるのか、その大枠を作るのです。
レイアウトは、ゾーニングによって分けられたスペースに対し、デスクや椅子、コピー機といった設備をどう配置するかを決める、具体的な空間設計を指します。レイアウトが固まれば、各部署の場所を決めたり、IT・セキュリティの配置・配線計画を策定したりしましょう。
関連工事業者・納品業者の選定と発注
新オフィスのレイアウトが決定した後は、通信工事や電気工事、内装工事、天井工事など、関連工事を担当する業者の選定をします。工事内容によっては、貸主が指定する業者しか使用できない場合もあるため、早い段階で貸主に確認することが大切です。指定がない場合は、複数の業者から見積もりを取り、費用や納期、実績などを比較して選定します。
業者を選定し、工事の発注をする際には、スケジュールを綿密に調整し、計画どおりに進行できるよう管理することが重要です。
また、新オフィスで使用する家具や設備の選定も、並行して進めます。既存のものを流用できるかを事前に確認し、新たに購入が必要なものについては、納品業者を選定した上で、納品日が移転スケジュールに間に合うよう、早めに発注をします。引越し業者の選定や発注も、このタイミングで行いましょう。
引越し準備
オフィス移転作業が進む中で、欠かせないのが引越し準備です。新オフィスへの移転日が決定した段階で、社員向けの引越し説明会を開催しましょう。
新オフィスのレイアウト、座席の割り当て、書類収納の方法、パソコンや周辺機器の移動手順、廃棄物の処理ルールなど、具体的に説明するようにしてください。加えて、新オフィスのコンセプトや、どのような働き方を目指しているのかも共有することで、社員の理解と協力を得やすくなります。
社員に向けた移転マニュアルの作成も、円滑な引越しに有効な手段です。マニュアルには、荷物の梱包方法や梱包資材の配布場所、各部署の担当作業、問い合わせ窓口、移転スケジュールなどを網羅的にまとめ、社員に配布します。
引越し説明会用の資料フォーマットについては、こちらのページでご紹介していますので、ぜひダウンロードの上、ご活用ください。
オフィス移転に必要な各種行政手続き
オフィス移転においては、さまざまな行政手続きを適切に行うことが求められます。これらの手続きを怠ると、法的なトラブルを抱えたり、業務に支障をきたしたりするリスクがあるため、必要な手続きを洗い出し、スケジュールを立てて進めるようにしましょう。
主な行政手続きとその概要をまとめましたので、参考にしてください。
■オフィス移転に伴う行政手続き一覧
オフィス移転に伴う行政手続き一覧
手続き・届出 | 提出先 | 提出期限 | 備考 | チェック |
---|---|---|---|---|
本店移転登記 | 移転前の管轄法務局(登記所) | 移転後2週間以内 | □ | |
支店移転登記 | 支店管轄法務局(登記所) | 移転後3週間以内 | □ | |
異動届出書 | 移転前の管轄税務署 | 移転後速やかに | □ | |
法人住所変更届 | 税務署 | 移転後1ヶ月以内 | 税務署、都道府県税事務所、市区町村役所にそれぞれ提出が必要。地域によっては一括申請が可能な場合あり。オンライン申請の可能性も要確認。 | □ |
法人住所変更届 | 都道府県税事務所 | 移転後1ヶ月以内 | 同上 | □ |
法人住所変更届 | 市区町村役所 | 移転後1ヶ月以内 | 同上 | □ |
給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書 | 移転前の管轄税務署 | 移転後1ヶ月以内 | □ | |
健康保険・厚生年金保険適用事業所名称/所在地変更(訂正)届 | 移転前の事業所の所在地を管轄する年金事務所 | 移転後5日以内 | □ | |
労働保険名称・所在地等変更届 | 移転先の管轄労働基準監督署 | 変更のあった日の翌日から10日以内 | 労災保険に関する手続き | □ |
雇用保険事業主事業所各種変更届 | 公共職業安定所(ハローワーク) | 移転後10日以内 | □ | |
健康保険・厚生年金保険 被保険者住所変更届 | 年金事務所 | 移転後遅滞なく | □ | |
事業開始等申告書(移転) | 都道府県税事務所 | 移転後1ヶ月以内 | □ | |
自動車保管場所証明申請書 | 管轄警察署 | 移転後速やかに | □ | |
防火対象物使用開始届出書 | 移転先の管轄消防署 | 使用開始前 | 具体的な期限は各消防署に確認が必要 | □ |
防火対象物工事等計画届出書 | 移転先の管轄消防署 | 工事開始の7日前まで | 改装工事等がある場合に必要 | □ |
防火・防災管理者選任(解任)届出書 | 移転先の管轄消防署 | 選任後速やかに | 新たに防火管理者を選任する場合 | □ |
消防計画作成(変更)届出書 | 移転先の管轄消防署 | 作成・変更後速やかに | □ | |
転居届 | 郵便局 | 移転先住所・移転日決定後なるべく速やかに | 旧住所宛の郵便物の転送サービスを受けるため | □ |
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- 本表は一般的な行政手続きの概要を示すものです。実際の手続きや提出期限は、企業の形態、地域、移転の規模などによって異なる場合があります。
- 記載されている情報は作成時点のものであり、法令改正等により変更される可能性があります。最新の正確な情報については、各管轄機関にお問い合わせください。
- 一部の手続きでは、オンライン申請が可能な場合があります。詳細は各機関のウェブサイトをご確認ください。
- この表に記載されていない追加の手続きが必要となる場合もあります。特に、業種特有の許認可や届出が必要な場合は、関連する行政機関にご確認ください。
- 手続きの遅延や漏れは、事業運営に支障をきたす可能性があります。余裕を持ったスケジュール管理をお勧めします。
- 専門的なアドバイスが必要な場合は、税理士、社会保険労務士、行政書士などの専門家にご相談ください。
本表は情報提供を目的としており、法的助言を構成するものではありません。具体的な手続きについては、必ず関係機関にお問い合わせの上、ご対応ください。
印刷物の手配
オフィスを移転する際には、名刺や封筒など、住所が記載されている印刷物の更新も必要です。印刷業者への発注は余裕を持って行い、移転初日から新住所が反映された印刷物を使用できるように準備します。
さらに、取引先やパートナー企業への移転案内も忘れずに行いましょう。オフィス移転は、社内外問わず影響範囲が広いため、正確かつ迅速な情報発信が求められます。
オフィス移転をスムーズに行うためのポイント
オフィス移転は、計画どおりに進めることが何より重要です。しかし、総務のタスクはさまざまであり、予期せぬトラブルが発生することも少なくありません。
ここでは、オフィス移転をスムーズに行うためのポイントについて解説していきましょう。
業者選定を早めに行う
オフィス移転をスムーズに進めるためには、業者の選定を早めに行うことが重要です。オフィス移転には、電気工事などを担当する工事業者や引越し業者など、さまざまな業者が関わります。貸主が指定する業者がいない場合、複数社から見積もりを取るようにしましょう。
また、実績が豊富な業者であれば、スムーズな動きやトラブル時の柔軟な対応が期待できます。業者を選定する際には、過去の実績もチェックするようにしてください。
全体像を把握してチェックリストを作る
オフィス移転を成功させるためには、全体像を把握し、それを網羅したチェックリストを作ることも大切です。オフィス移転には、これまでご紹介したとおり、数多くのタスクが存在します。一覧で進捗管理ができる環境を整えることで、タスクの抜け漏れや遅延を防ぎ、安心して移転作業を進められます。
チェックリストには、各タスクの完了期限、必要な書類、関係者の連絡先などを細かく記載するのがポイントです。
また、担当者が不在の場合でも進捗が把握できるよう、共有ファイルやプロジェクト管理ツールを活用してもいいでしょう。
オフィス移転の専門会社に依頼する
オフィス移転は、多くのタスクが絡み合う複雑なプロジェクトです。そのため、総務のリソースだけで進めると担当者の負担が大きくなり、通常業務に支障をきたすことも少なくありません。そのようなときに有効なのが、オフィス移転の専門会社です。
外部の専門会社に依頼するメリットは、オフィス移転をスムーズに実行できる点です。豊富な経験と専門知識を持っているので、適切なサポートをしてもらえるでしょう。
円滑なオフィス移転は、コクヨマーケティングにご相談ください
オフィス移転は、企業の成長や社員の働き方の改善を実現する大きなチャンスですが、多くのタスクを伴う大規模なプロジェクトです。そのため、適切なスケジュール管理やリスク対策が成功のカギを握ります。そこで頼りになるのが、オフィス移転の専門会社です。
コクヨマーケティングは、年間2万5,000件以上の豊富なオフィス移転実績を持ち、新オフィスの物件探しのサポートからゾーニング・レイアウト、業者間の調整まで、トータルでサポートします。専門知識とノウハウを活かし、お客様のニーズに合わせた最適なオフィス移転を実現。「働きやすさを向上させるレイアウトの提案」や「コスト削減につながる工事計画の策定」といった、付加価値も提供いたします。オフィス移転をお考えの際は、ぜひコクヨマーケティングにご相談ください。
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