コロナ禍の影響で、急速に広がったテレワーク。近年は、テレワーク中心の働き方をあらため、オフィスに出社する「オフィス回帰」を進める企業が増えています。
この記事では、オフィス回帰の現状や、企業がオフィス回帰を進める理由について解説します。併せて、オフィス回帰のメリット・デメリットのほか、オフィス回帰をうまく進めるためのポイントについても見ていきましょう。
オフィス回帰の現状
オフィス回帰の動きは、世界的に加速しています。特に注目を集めたのが、アメリカの大手オンライン通販会社、Amazon.com, Inc.の方針変更です。
同社では、これまでテレワークとオフィスでの勤務を組み合わせたハイブリッド勤務を推奨していましたが、2025年1月からこの制度を廃止しました。これにより、社員は週5日間オフィスに出社することが義務付けられています。
このような動きは、日本国内でも見られています。公益財団法人日本生産性本部が実施した「第16回 働く人の意識調査」によると、2025年1月時点のテレワーク実施率はわずか14.6%と、調査開始以来最も低い数値を記録しました。また、年代別のテレワーク実施率を見ると、20代のみ微増したものの、ほかの年代では軒並み減少しており、全体としてオフィス回帰の流れが顕著となっています。
オフィス回帰が進む理由
コロナ禍が一段落し、企業はテレワークという働き方を再評価するタイミングを迎えています。そのような状況で、オフィス回帰の動きが活発化している背景には、さまざまな理由があります。ここでは、オフィス回帰が進む理由について解説していきましょう。
生産性低下への懸念
企業がオフィス回帰を進める理由のひとつに、テレワークによる生産性低下を懸念していることが挙げられます。
自宅など、オフィス以外で行う仕事では、集中力の維持が難しかったり、インターネット環境によって業務効率が落ちたりするケースが見受けられます。また、テレワークによって、勤怠管理や業務進捗の把握が難しくなるという、管理上の課題も生まれました。こうした問題を解消する手段として、オフィス回帰を進めようとする企業が見られます。
対面コミュニケーション不足への懸念
テレワークの長期化によって、対面でのコミュニケーションが不足していることに対する懸念も、オフィス回帰を促す理由となっています。
テレワークにおけるコミュニケーションで多く使われるチャットツールは、非言語情報が伝わりにくいというデメリットがあります。例えば、表情やジェスチャー、声のトーンなど、コミュニケーションの微妙なニュアンスが失われがちです。その結果、意図しないコミュニケーションのずれが起きることもあります。こうしたずれが、企業に対する社員の帰属意識を低下させたり、意思決定の遅れにつながったりすることもあるでしょう。
オフィス回帰のメリット
オフィス回帰が進むことで、企業はどのようなメリットを得られるのでしょうか。ここでは、オフィス回帰によるメリットをいくつかご紹介します。
生産性の向上
オフィス回帰には、生産性の向上が期待できるメリットがあります。
テレワークでは、家庭の事情による中断が避けられないことがありますが、オフィスでは、業務に集中できる環境が確保されています。さらに、高性能なオフィス機器や高速のネットワークなど、充実したインフラも生産性向上に貢献するでしょう。
コミュニケーションの活性化
オフィス回帰のメリットには、コミュニケーションの活性化も挙げられます。同じ空間で働くことで、メンバー同士の会話が自然に増えていきます。休憩時間の雑談の中から、思いがけないアイデアや新しいプロジェクトが生まれることもあるでしょう。
さらに、対面コミュニケーションでは、顔の表情や声の調子、手・体の動きなどを使ったやりとりが可能です。テレワークでは、なかなか伝わりづらい非言語情報があることで、コミュニケーションのずれも起こりづらくなります。
組織の結束力の強化
オフィス回帰によるメリットに、組織の結束力を高められる点も挙げられます。オフィスは単なる作業空間ではなく、企業の価値観や理念を体現する場でもあります。
また、日常的な対面の交流を通じて、先輩社員から企業の歴史や成功体験を学ぶことも可能です。こうした経験は、特に新入社員や若手社員にとって、企業文化を肌で感じる大切な機会となります。
さらに、オフィスでの共通体験を重ねることで、部門を越えたつながりが強化され、組織全体の一体感が醸成されます。従業員同士が「同じ船に乗っている」という意識を持てば、モチベーションの向上や離職率の低下にもつながるでしょう。
オフィス回帰のデメリット
オフィス回帰には多くのメリットがある一方で、デメリットも存在します。こうしたデメリットを把握することは、オフィス回帰を成功させるために必要といえるでしょう。ここでは、代表的なオフィス回帰のデメリットを紹介します。
従業員満足度の低下
オフィス回帰の過程で問題となるのが、従業員満足度の低下です。
テレワークに慣れた従業員にとって、再び出社を義務付けられることは、大きなストレス要因となりえます。その結果、モチベーションの低下や離職リスクが高まる可能性も否定できません。
ワークライフバランスの阻害
オフィス回帰が進む中で懸念されるもうひとつの課題が、ワークライフバランスの阻害です。テレワークの普及で、社員は通勤時間を削減でき、プライベートな時間を確保しやすくなりました。しかし、出社回数が増えることで、このバランスが崩れやすくなります。
特に、子育て中であったり介護を担っていたりする社員にとっては、時間のやりくりが難しくなり、ストレスや疲労の原因となる場合もあるでしょう。
また、通勤時間が長い場合、心身への負担が増し、睡眠時間や家族との団らんの時間が減少するなど、生活全体に悪影響を及ぼす可能性もあります。
オフィス回帰をうまく進めるためのポイント
オフィス回帰を円滑に進めるためには、従業員の負担を軽減しながら進める工夫が必要です。ここでは、オフィス回帰を成功させるための具体的なポイントを解説します。
一気に進めようとしない
オフィス回帰を成功させるためには、段階的な導入をおすすめします。いきなり毎日出社させてしまうと、急激な環境変化が社員に大きなストレスを与えるおそれがあります。
例えば、まずは特定の部署や役職ごとに出社を再開し、週1~2日程度からスタート。その後、状況を見ながら少しずつ出社日数を増やしていく方法が有効です。
また、テレワークとオフィス勤務を組み合わせたハイブリッド勤務の導入も効果的です。この方法では、対面でのコミュニケーションが必要な日は出社し、それ以外の日はテレワークを許可することで、出社のメリットとテレワークの柔軟性を両立できます。社員にとっても、無理なく新しい働き方に適応できるため、モチベーションの維持が期待できます。
ハイブリッドワークについては、こちらの記事で詳しくご紹介していますので併せてご覧ください。
さらに、定期的にアンケートやヒアリングを実施し、従業員からのフィードバックをもとに出社方針を見直すことも重要です。柔軟で段階的なアプローチを採用すれば、オフィス回帰をスムーズに進められるでしょう。
働きやすいオフィス環境にする
オフィス回帰を成功させるためには、社員が快適に働ける環境を整えることが重要です。例えば、フリーアドレス制の導入や、社員同士で気軽なコミュニケーションができるリラクゼーションスペースの設置は、柔軟で効率的な働き方をサポートします。
さらに、自然光を取り入れた明るいレイアウトやスタンディングデスクの導入など、健康面への配慮も有効です。
従業員の満足度と生産性を同時に向上させるオフィスリニューアルも注目されています。従業員が前向きに出社できる環境を整えることが、オフィス回帰をうまく進めるためのポイントとなるでしょう。
社員の意見を取り入れる
オフィス回帰を、単なる「元の状態への復帰」にせず、「進化した働き方の実現」へと導くためには、社員の意見も参考になるでしょう。例えば、社内アンケートによって社員の意見をヒアリングし、その内容をもとに、社員が積極的に出社したくなるようなオフィス環境にすることも、オフィス回帰の成功につながります。
また、働く環境を客観的に診断するサービスも、大きな助けになります。例えば、コクヨマーケティングの「はたナビ プロ」は、社員に対して行うウェブ上のアンケート結果を分析し、満足度や職場の課題などをレポートとして提出する「働く環境診断サービス」です。こうしたサービスを活用することで、社員の意見をデータとして可視化し、優先すべき課題を明確にすることができます。
コクヨの働く環境診断サービス「はたナビ プロ」はこちらのページで詳しくご紹介していますので、ぜひご覧ください。
オフィス回帰の参考となるオフィス環境のリニューアル事例
最後に、コクヨマーケティングが手掛けた、オフィス環境のリニューアル事例をご紹介します。オフィス回帰を進める際の参考にしてください。
株式会社佐渡島様:古くて新しい会社を印象付けるオフィス環境
株式会社佐渡島様は、1876年に創業された歴史ある企業です。従来のオフィスは、長い歴史がひと目でわかるような、いわゆる昔ながらのオフィスでした。コロナ禍によって、大きく働き方が変わったことをきっかけに、古くて新しい会社という印象が伝わるオフィスへのリニューアルを実施しました。
新しくなったオフィスは、明るさと開放感を重視しています。また、動線をあえて斜めにすることで奥行きを強調し、抜け感も演出。会社に訪れた人は、オフィスのエントランスに入ったときから、現代的な雰囲気のオフィス空間を感じていただけるかもしれません。
リニューアル前のオフィスでは、他部門とのコミュニケーションが少なく、お互いの業務内容が見えにくいという課題もありました。そこで、リニューアルによってコミュニケーションが促進されるよう、社員の交流が活発になるようなオフィスレイアウトに変更しています。
株式会社佐渡島様の事例はこちらのページでご紹介していますので、ぜひご覧ください。
「創業150周年に向けて」老舗企業の働き方変革
トヨタテクニカルディベロップメント株式会社様:コロナ禍をきっかけにリニューアル方針を変更
トヨタテクニカルディベロップメント株式会社様は、2017年の段階でオフィスのリニューアルを検討していましたが、コロナ禍によってプロジェクトが一時中断してしまいます。その後、コロナ禍による働き方の転換によって、リニューアルの方針を変更。「Life&Workの充実」をテーマにしたオフィスリニューアルを実施しました。
例えば、立ち会議スペースを設置したり、肩や腰への負担を軽減する椅子を採用したりして、社員が健康的に仕事をできるような工夫を施しています。また、オフィスの所々に植物を置くことで、ウェルビーイングも促進しています。
リニューアル前のオフィスには、オープンなコミュニケーションエリアや会議室はありましたが、気軽に雑談できる場所が不足しているという課題がありました。
偶発的な出会いやアイデアの自然な共有ができるよう、社員間でコミュニケーションが活発に行われる空間づくりも、リニューアルの大きな目的のひとつです。
トヨタテクニカルディベロップメント株式会社様の事例はこちらのページでご紹介していますので、ぜひご覧ください。ハイブリッドワークを実践!目的意識をもって働くオフィス
オフィス回帰を検討する際は、コクヨマーケティングにご相談ください
オフィス回帰は、単なる働き方の「逆戻り」ではなく、企業の生産性向上や組織力強化を目指す重要な戦略です。しかし、オフィス回帰を円滑に進めるためには、段階的な導入や、働きやすいオフィス環境の整備が欠かせません。従業員満足度やワークライフバランスにも十分に配慮しながら、慎重に進めることがポイントです。
こうしたオフィス回帰のプロジェクトは、企業の総務担当者にとって大きな負担となる場合があります。業務が多岐にわたる中、プロジェクトを自社だけで進めるのはリスクも伴います。だからこそ、豊富な実績を持つ専門業者への相談が重要といえるでしょう。
コクヨマーケティングでは、年間2万5,000件以上のオフィス移転・リニューアルの実績を誇り、経験豊富な担当者が企業ごとの課題やニーズに合わせた最適なオフィスづくりをサポートしています。さらに、コクヨの社員が働くオフィスを見学できる「オフィス見学」のお申込みも、受け付け中です。新しい働き方やオフィスづくりのヒントをお探しの方は、ぜひコクヨのオフィスへお越しください。
オフィス移転・改装レイアウトの課題を解決します